『STOP!“争族” 突然の相続で会社・家族が崩壊』

『STOP!“争族” 突然の相続で会社・家族が崩壊』


どんな人も生まれれば必ず死を迎えます。そこで発生するのが相続です。せっかくの遺された財産を争いの種にしないためにはどうすればいいのか。ふじ法律事務所の所長弁護士である斎藤和将さんにお話を伺いました。


一般的な相続の手続き

-まず一般的な相続について教えてください

saito03_tateどんな人でも生まれれば必ず死を迎えます。人が亡くなったときに発生するのが相続ですが、もちろん、すべての相続案件に弁護士が関与するわけではありません。相続人同士で話し合いがまとまらないときに、初めて弁護士の出番になります。

手続きの流れは、大まかに言うと

    1. 相続人(遺産を受け取る人)を確定する
    2. 財産の確定をする
    3. どうやって分けるかを決める

と分けることができます。

流れを追って、

1.相続人の確定からお話しします。

日本では、被相続人(亡くなった人)の四十九日が終わるまでは遺産分割の話しをせずに、四十九日が終わってから本格的な話し合いを始める例が多いようです。相続人の確定には、被相続人の戸籍を集めて調査します。戸籍を集めて初めて、被相続人に、前妻との間の子供がいることが判明するようなこともあります。

次に

2.財産の確定を行います。

財産には、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。土地建物のような不動産、通常使用している銀行預金、証券会社に管理してもらっている有価証券などは比較的容易に把握できます。しかし、海外にある財産は把握が難しいケースも多いようです。例えば、ハワイのコンドミニアムのような不動産、海外の投資ファンドに預けてある資金、海外の匿名組合への出資など、相続人しか知らない財産も多く存在します。また、国内の財産でも、貸金庫に保管されている財産などは、そもそもどこに貸金庫があるか把握できないようなことも起こります。さらには、金ののべ棒が出てくるケース、高価な美術品、骨董品などが様々な場所に保管されているケースもあり得ます。株式なども、上場企業への投資であれば、証券会社で把握できますが、未公開企業の株式へ投資している場合など、どの会社にいくら投資していて、そもそも現在の株価がいくらになるのかといった部分は、非相続人が把握するのに大変な労力がかかることもあります。

また、借金などのマイナスの財産の場合には、被相続人本人の借金であれば、毎月の返済などでほぼ把握できますが、相続人が把握するのに困難なものは連帯保証です。被相続人本人も忘れているケースもあるくらい自覚が乏しいこともあります。例えば、被相続人が、友人の社長が経営する会社の借金の保証人になっているようなケースでは、本人の死後、相続人が把握するのが不可能なケースも出てくるのではないでしょうか。

財産の把握が難しいケースでは、被相続人が、生前に、自分の財産リストをしっかりと作成し、相続人とも財産の概要を把握するためのコミュニケーションをとっておくことが重要になってきます。

相続人と財産が確定すれば後は、

3.分ける段階です。

父親が亡くなり母親が親族会議を開いて、母親主導のもとに子供たちが従ってくれる場合など、穏便に済めばよいのですが、相続人同士で争いになってしまった場合には、相続人のかたから弁護士にアプローチしていただくことになります。財産の中には、単純に金額的に価値が把握できる預貯金や有価証券などもあります。しかし、自宅や先祖代々の土地、被相続人が大きくしてきた会社など、客観的な経済価値では把握しにくい家族の思いが入った財産もあります。これらを誰がどのように引き継いでいくのか、単純な割り算では分けきれない財産を分けるという大変な作業が発生します。

財産を分けるという作業は、何も、お金持ちだけの問題でもありません。少額の財産であっても「争」族が発生することがあります。財産を分ける作業は、その額が大きくても小さくても大変な問題になりかねないのです。例えば、相続財産が自宅のみというケースを想像してみてください。長男が相続しますか?次男が相続しますか?自分たちが生まれ育った家は残したいけど、どちらのものにするのでしょう?それとも、換金して2人で均等に分けることが可能ですか?

さらに、財産を分ける場合に検討しておかなくてはいけない項目に、納税資金の確保という問題があります。相続人は相続税を納付しなくてはいけません。この相続税が思っていたよりも高額になるケースもよく起こります。相続財産が金融資産(預金や株式など)中心であれば納税も比較的容易ですが、相続財産が、不動産(土地・建物)や自社株などの未公開株式だけだったような場合には、換金が難しいために納税資金がなく、土地を手放したり、物納しなくてはいけないケースも生じ得ます。


-これまでにあった相続上のトラブルはどんなものがありますか?

1.相続人を確定する段階では、上でお話ししたように、隠し子が発覚したようなケースが、私の経験した代表的なトラブル事例です。突然現れた人にも、法律的に平等に相続する権利があります。しかし、これを頭では理解できたとしても、いざ一度も会ったことの無い人が目の前に現れ、財産の一部を渡さなければならなくなったときに、なぜ自分たちの財産が減るのか、感情的に納得できない思いを抱くことは大いにあり得るのです。これに、被相続人(父親)が自分たちに対して大きな秘密があったという点で父親に裏切られたような感情が加わり、なかなか被相続人の中で突然の出来事を受け入れられないことも多いようです。

次に、2.財産を確定する段階でよく問題になるのは、被相続人と一緒に住んでいた人が預貯金を隠したり、使ってしまったりしたケースです。これを防ぐために、被相続人が死亡すると、その人の銀行口座はロックされます。被相続人の生前に相続人が被相続人の預貯金を使用した場合は、遺産を先にもらっていたものと見なされ、のちの相続ではその人の相続額が減額されることがあります。

財産の確定の段階では、財産の金銭評価が問題になるケースも多く発生します。典型例は不動産です。不動産の価格は、時期によっても変動しますし、評価の方法も何種類かありますから、一義的ではありません。

また、自社株の評価も大きな問題に発展します。自社株の評価というと、株価が高すぎる問題として相続税の節税の問題としてよく取り上げられますが、逆に、株価が低すぎて問題となるケースもあります。例えば、これは、私が直接扱った案件ではなく、聞いた話なのですが、長年業績が悪く、債務超過(プラス財産よりマイナス財産が多い会社)になってしまっている会社がありました。この会社は相続税の株価評価では株価がゼロ円と評価されました。つまり価値がないという評価です。そこで、新社長の長男は財産を分ける際に、この株式全株を評価額ゼロ円で自分のものにしました。そして、この株式以外の財産を長男、次男で半分ずつに分けたのです。しかし、この会社は長年の業績不振で債務超過になっていたものの、よく分析してみると、ここ1年程度はリストラ効果が出てきており利益が出る体質へと体質改善が進んでいました。さらに、相続発生後には業績が急速に向上し、超優良企業へと変身していきました。毎年の利益額も大きくなり、投資家からの資金も入り、株式公開を準備する会社へと成長した時に、次男は騙されたと思い、長男・次男の争いへと発展してしまったようです。

3.財産を分割する段階では、民法の定める法定相続に従って、きちんと分割できれば問題ありません。しかし、財産には預貯金や不動産・負債など多様なものが含まれますので、これをどう分けるかで、もめることがあります。不動産をもらいたい相続人がいた場合、もらう人は不動産を価格で評価したいと思うでしょうが、不動産をもらわない人は、反対に高く評価してもらいたいでしょう。先にお話ししましたとおり、不動産の評価は一義的に定まるものではありませんから、不動産の評価を巡って、もめ事の発生する可能性があるのです。

その他に、被相続人が高齢になっているケースも問題が発生しうるケースです。夫が亡くなり、相続人が母と子で、母が高齢で判断能力が不十分な場合があり得ます。この場合には、母に成年後見などの制度を活用しつつ遺産分割の話し合いを進めていく必要があります。


タグ:

この記事は参考になりましたか?

1 Star2 Stars3 Stars4 Stars5 Stars (2 投票, 平均値/最大値: 4.50 / 5)
Loading ... Loading ...