『個人事業と株式会社 税金面ではどちらが得?』

資本金が1円で株式会社が設立できる今、起業するのに個人事業と株式会社どちらを選ぶべきか悩む方は多いのではないでしょうか。税理士法人フューチャースケープ代表税理士の廣瀬真理さんに、税金という観点から個人事業と株式会社の違いを伺いました。

  • 創業時に考えておきたい税金

-まず税理士とはどんな仕事をしているのでしょうか?

税理士は、企業もしくは個人が事業を行っていく上で発生する税金を計算して、税務署に正しい申告書を提出するのが仕事です。現在ではそれだけではなく、プラスアルファとして税務に関するコンサルティングの需要が増えてきています。決算期に登場するというイメージを持たれる方が多いと思いますが、経営者は毎月の売り上げや利益を知った上で会社を運営するため、月ごとの指導も行っています。hirose tokusyu

-会社を創業してから納税申告するまでの流れを教えてください。

会社を創りたいと思ったら、その会社が何をする会社なのか、何を目指しているのか等を書いた定款を作成します。次に法人を登記します。これによって初めて会社を設立したと言えるのです。この次のステップから税理士が登場します。税務署などに会社を設立した旨を届け出るのです。子供が生まれたときに出生届を出すのと同じですね。従業員を雇う場合は社会保険事務所、労働基準監督署にも届出をします。これらの手続きを経て開業し、営業活動を始めると、売り上げがでますが、一方で費用が発生します。決算日にこれらを計算し、利益を確定し、それをもとに収める税金の額を算定します。そうして税務署に税務申告を行う、というのが流れです。しかし申告すればそれで終わりではなく、帳簿や証票(請求書や領収書など)は10年間の保存義務がありますから注意してください。

-起業時に係る費用はどんなものがありますか?

創業時には、定款作成代や各役所への届出の申告代と、資本金、運転資金、従業員を雇うならその雇用代が必要になってきます。定款の作成や届出には司法書士を雇うことが多いですし、いくら資本金1円で株式会社が興せても、運転費用や設備投資資金は1円では足りませんから、国や都の融資制度を利用するのも良いと思います。

  • 個人事業か法人か

-まず個人事業と法人の違いを教えてください。

個人事業に必要な手続きは、税務署に税務申告を行うのみです。極端に言えば「今日からこの事業をやります。」と宣言すれば個人事業主なのです。一方で、法人は定款を作り、法人登記をして初めて会社を設立したと言えます。

-事業に係る税金にはどのようなものがありますか?

個人事業か法人かで変わってきますが、どちらも支払わなくてはならないのが、所得税(法人であれば法人税)、消費税、住民税(法人であれば法人都民税)です。法人であれば、これに事業税が加わります。

まず所得税(法人であれば法人税)は事業から得られた利益に対して課される税金です。課税される所得金額によって税率と控除額が決まっており、個人ならば最高税率は課税所得1800万円以上の場合で40%です。法人ならば最高で30%です。消費税は起業してから2年間は課税されません。前々年の売り上げが1000万円を超えると消費税が課されます。住民税(もしくは法人都民税)は市町村に収めます。法人にのみ課される事業税は、利益が出ていなければ払わなくても済みます。日本の中小企業の7割ほどは赤字なため、事業税を払っていません。むしろ事業税を払わなくて済むようにするために経費を計上していると言ってもいいかもしれません。そして消費税と住民税(もしくは法人都民税)は事業が赤字でも支払うことになりますので、創業して間もない体力のない企業は注意が必要です。

-個人事業から法人成りするメリットはなんでしょうか?

個人事業を法人化することによって得られるメリットは、節税とそれ以外に分けられます。

節税以外のメリットとしては、取引先や銀行からの信用が増すということや、社会保険に加入することで人材の確保が容易になると言ったことが挙げられます。また、個人事業を営んでいる場合、どうしても個人の財布と事業の財布が混ざってしまい、自分がどれだけ事業にお金を出しているのかがわかりにくくなりがちですが、法人成りすると給与という形で所得を得ますので、個人と事業の財布が明確に分けられます。

節税に関することでは、まず事業所得から給与所得へと転換することによって減税ができます。事業から得られた所得を給与として支給することで減税するのです。個人事業であれば収益がすべて自分の所得になりますから、最高税率が適用されて所得の半分近くを持っていかれることになりますが、売り上げの中から給与として支給すれば、給与は費用ですから、収益は減り、その分減税できます。例えば、法人なら利益800万円までは税率が18%ですが、800万円を超えると30%になります。利益が800万円以下に収まるように給与を支払えば、税率は18%で済むのです。野球選手が自分の事務所を作るのも同じ理由で、事務所の従業員として家族を雇い、その家族に給与を支払うことで利益を抑えているのです。個人事業では家族に対する給与は認められていませんので、これは法人成りすることによって得られる大きなメリットです。もちろん支払う給与が年間1800万円を超えれば、その所得には40%課税されますので、法人税と所得税の税率で微妙な調整が必要です。これらは現金の流出を伴う節税と言えます。例えば高級車や絵画を購入して代金を経費として計上し、利益を減らして節税する、などの華々しい節税方法もこれに分類されます。こうした派手な節税対策も重要ですが、一番効果があるのは、地味で複雑であっても「キャッシュアウトを伴わず、税金の繰り延べでもない」節税です。例えば貸し倒れ引当金を繰り入れることは、貸し倒れ引当金は費用ですから、それ自体が節税と言えますし、キャッシュアウトを伴いません。さらに、取引相手の財務状況ごとに繰入率を変えられますので、細かく設定すれば通常よりも多めに引当金を計上できることもあります。また棚卸資産の傷みを積極的に評価損として計上したり、営業中に必要な仕事をアウトソースすることで支払う消費税を減らしつつ費用を計上するというやり方もあります。

節税は悪いことではありません。合法的に国に納めるお金を減らしているだけで、その分を社内留保して会社に体力をつけることも重要なことです。

-一方で法人成りによって起こるデメリットはありますか?

まずは交際費に限度額ができることが挙げられます。資本金が1億円以下の会社だと、交際費の限度額は600万円と定められていますし、そのうち90%しか経費と認められません。個人事業なら限度額がありませんので、無限に交際費を計上できます。次に、記帳の義務や社会保険料の負担がありますが、これらは法人成りのメリットと表裏一体と言えるでしょう。最後が特殊支配同族会社の役員報酬損金不算入です。同族会社が節税のために役員に1800万円以上の給与を与えると、国がその減税効果を無効化してしまうという決まりです。とはいえこれらのデメリットを加味しても、法人成りのメリットは甚大です。租税に関する法律は措置法が毎年細かく改訂されます。企業はそれをキャッチアップするためにも、創業の時点から信頼のおける税理士を見つけることをおすすめします。


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